10月の法語は「豊かさを求めて 心が貧しくなる」です。
収穫の秋を迎えました。その昔から日本における多くの行事は、収穫期に向け、農作物の豊作を願うものが多いのはご承知のことでしょう。しかし、現代では温室農耕などが発達し、季節関係なく様々な食材を入手できます。このように色々なことが可能になると、どうやら人間は手に入るのが当たり前だと勘違いし、傲慢になってしまったようです。
客観的に見ると、もうすでにたくさんのものを手にしているのに「まだ、まだ」「もっと、もっと」と欲望を振り乱している私が浮き彫りになります。
このありさまを仏教では「貪欲(とんよく)」と言います。満腹になっていても、次に出されたものを別腹だと言って手を伸ばす、その根性のことです。食べ物に限らず、もっと、たくさん欲しい、人に分け与えたくないというような思いが私たちには存在します。
科学の驚異的発展は便利な生活を生み出しましたが、その一方で、満足や感謝を忘れ、いよいよ欲望を煽ってきたことを忘れてはなりません。