ryusenji's blog

掲示板法語と寺報を中心にアップします。

2024.5 掲示板法語

2024.5 掲示板法語

 5月の法語は「一度きりの人生を どう 生きるのか」です。

 

 この季節になると、道路を横切る「クマケムシ」が気になります。成虫になると、キリン柄のようなオシャレな羽根を羽ばたかせ、夜な夜な灯火に向かって飛行し、行灯(あんどん)の明かりを消してしまうことから「火取蛾(ヒトリガ)」と名付けられたそうですが、春先に見かける幼虫の数の割には、成虫と出会えることは稀です。なぜなら、幼虫の大半が道路を渡り切れないまま、車に轢かれて亡くなってしまうからです。彼らが危険を冒してまで道路を渡りたい理由は、食事のためだと言われています。

 

 無防備にアスファルトを闊歩(かっぽ)する彼らを見ていると、人間の姿が重なってしまいます。生きていくために睡眠時間を削ってがむしゃらに仕事をし、神経をすり減らして毎日を送り、行きつく先はいったいどこなのでしょうか。

 

 ふと我に返ると、生きていくための仕事のはずが、仕事のために生きていることに気づき、ソクラテスの「生きるために食べよ、食べるために生きるな」という言葉を思い出しました。

 

 一見、言葉遊びのようですが、ソクラテスは人間の本末転倒している在り方を明確に言い当てています。このような立脚地の転換は、身を置く環境は変わらなくても見えてくる世界を一変させてくれます。一度きりの人生だからこそ、大切に過ごしたいものです。